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   JR北海道の悲鳴

 11月18日、JR北海道は全路線の約半分にあたる10路線13区間、距離にして1,237.2キロメートルの鉄道は維持できないと発表した。このうち3区間はバスへの転換を検討するとしているが、残りの10区間は駅の廃止や自治体に線路維持を任せ、JRは運行に専念する「上下分離方式」などを協議するという。
 線路維持とは保線のことであり、自治体が保線作業を行うことなどできるわけもないから、要は金を出せということになろう。協議の対象となる自治体は道内の30%にあたる56自治体で、いずれも財政難の自治体。早くも難色を示しているという。
   守る手段はあるはず・・・・
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 そうすると、全区間がバスに転換し、鉄道がなくなる公算が大きい。
 仮に、JR北海道が上げた路線がすべて廃線になると、名寄以北と道東に鉄道がなくなる。つまり稚内や根室といった日本の北端や東端に鉄道で行くことはできなくなる。
 地域の人たちにとっては安全な輸送機関がなくなり、ますます経済も文化も疲弊するに違いない。
 吹雪が舞う真冬でも除雪により鉄路は確保され、鉄道輸送は確かな拠り所となる。しかし、道路と自動車では猛吹雪に対応できない。娘さんを庇ってお父さんが凍死した痛ましい事故もまだ脳裏に残っている。北の大地だからこそ、鉄道は必要といえる。

   分割民営化で切捨て

 ある意味、JR北海道の行く末は見えていた。国鉄の分割民営化で北海道を単独会社にして、そこが黒字化することは誰がみてもできない話であった。早い話、その時点で見放したといえる。
 JR北海道の28年3月の経常利益はマイナス22億円。特別利益70億円を計上したことで当期純利益を55億円と無理やりプラスにしているが、実態は赤字である。
 片や、JR東日本とJR東海は超優良企業となった。JR東日本の2016年3月決算の当期純利益は連結ベースで2,660億円で過去最高。またJR東海は3,374億円である。この2社で7,000億円の当期純利益を上げている。いうまでもなく内部蓄積も巨額である。

   儲け主義の転換を

 国鉄の分割民営化の真の狙いは労働組合潰しといわれている。政府のその狙いは思惑通りの結果を生んで、労働組合運動は無力化した。その結果、格差が拡大し、様々な問題が蔓延することになったのは見ての通りだ。
 北海道の鉄道路線半壊もそのひとつといってよい。
 JR北海道の悲鳴声明を聞いて、政府の国鉄政策を歴史的に検証すべきではないかと思う。JR各社の合併と国有化など、歴史を転換する大胆な施策がなければ、日本の鉄道は新幹線と大都会の儲かる路線しか残らなくなるのではないか。

   行く末に 八高線も?

 眼を越生を通る八高線に転じると、嫌な数字が浮かび上がる。
 八高線の営業係数は362.4円だとされている。東洋経済オンラインで鉄道ジャーナリストの梅原淳氏がはじき出している。
 営業係数というのは、100円稼ぐのにいくらの経費が掛かっているかというもの。
 つまり八高線は、100円の売上に対して、362.4円の経費、差引262.4円の純損失という路線だということ。
 東京から一番近いローカル線といわれているが、鉄道ファンが押し寄せているわけでもなく、JR東日本には客数を増やそうという意気込みも見当たらない。
 儲け主義に走っているJR東日本にとってお荷物路線であることは疑いない。儲からない路線だからと、バッサリ切り捨てられてはたまらない。
 鉄道は公共交通である。八高線の存続はいうに及ばず、北海道の路線を守るために「国鉄一家」の再興を図ろうという声は上がらないのだろうか。
 「国鉄一家」でみれば、支えるだけの財務体質があるではないか。