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  ひっそりの年越し派遣村

 昨年マスコミをにぎわした“年越し派遣村”。今年はひっそりしている。
 国の経済、政策から振るい落とされた人たちは、今や『職』ではなく『食』を求めて“炊き出し”に集まってくる。多くが60代、70代の高齢者で、戦後日本の高度経済成長を支えてきた人たちである。
 黒光りする顔、腰を曲げた姿、ボランティアの若い人たちが食事を運ぶ光景は政治には見えない。1日1食を求めて遠くの炊き出しまで歩いていく姿は、今の日本の世相の写絵となった。

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 「福祉はお金がかかります」「タダではできないのです」と公言し、無駄遣いにはさまざまな言い訳をしている首長。
 「若い頃(高度経済成長期)は何でもやった」「昼夜働いた」「税金もたくさん取られた」「日本の経済発展の支えとなった」と自負する。「年を老いて体が思うように動かなくなった」「福祉を求めたが追い返された」「ホームレスになるしかなかった」と答える。
 多くのホームレスが言う。「けんかをしたことも、人をいじめたこともない」「精一杯生きてきたけど福祉も年金もない」「何時死んでもいいが、せめて畳の上で死にたい」
 厚生労働省の昨年1月の全国ホームレス調査によると、全国のホームレスは13,124人、2007年調査(4年前)では、平均年齢57、5歳(その後調査はない。もっと高齢になっている)である。私も62歳、まさに日本の高度経済成長を支えてきた年齢である。他人事とは思えない。
 「自分の人生を終わりにしたかった」「相手は誰でも良かった」「殺す気はなかった」若者の無差別殺傷事件が相次ぐが、年頃は27歳28歳ごろである。ちょうど私たちの子供の世代である。私の娘も27歳である。
 高齢者、若者が生きていけない経済、政治はどこか間違っていないか。
 
     来年度税制改正大綱決定
          法人税率5%減税 所得税・相続税増税が柱
 
 政府は昨年12月16日の臨時閣議で、2011年度税制改正大綱を決定した。改正の主な柱は法人税率の5%引下げによる減税、所得税・相続税の控除縮小による増税である。
 法人課税では、経済活性化や雇用拡大との名目で税率5%引下げ、国際競争力強化をはかるという。しかし、先進諸国最高水準の大企業優遇税制(租税特別措置)はほとんど温存したままとなっている。
 個人課税では、多くの控除見直しで所得税、住民税はほとんどの国民が増税となる。
 2010年度税制改正では子供手当(月額26,000円の公約が半額の13,000円支給)を実施する代わりに(公約違反のまま)15歳以下の扶養親族(年少扶養)控除を廃止する。2011年度税制改正では、23歳から69歳までの扶養親族(成年扶養)控除にも所得制限(年間所得400万円以下、給与だけなら年収568万円以下に限定)を加えた。2011年度税制改正を含めた一連の控除見直しは2014年までにすべて反映する。
 相続課税では、基礎控除を5,000万円→3,000万円に、法定相続人控除も1人当たり1,000万円→600万円と40%引下げた。
 この結果、普通のサラリーマン(都市圏に1戸建を持ち、公務員程度の退職金をもらい、人並みの生命保険に加入し、普通の貯蓄がある世帯)にも相続税がかかる可能性が出てくる。
 一言で、“庶民増税・大企業減税”である。

     税と福祉は コインの裏表

 “税は国民の福祉のために使うものである”は憲法の理念である。
 法人税率が先進諸国間で最高というなら、社会福祉のための保険料企業負担は最低である。さらに世界でも例を見ない大企業優遇税制(租税特別措置)も日本は特筆ものである。
 政治と経済は切っても切れない関係である。経済が安定してこそ政治も安定する。政治が安定してこそ経済も安定する。経済の安定とは国民生活の安定である。
 以前、税制研究でスウェーデンを訪問したことがある。スウェーデン国民から『国家は偉大なる父親である』と聞かされた。何かあれば国家が私たちを助けてくれる。だからこそ税金(高くても)は国家を信用して支払うのだ、とのことである。
 今の日本を見るに、全くスウェーデンとは逆である。働いて、働いて、働いて高齢者になった人たちをボロ雑巾のごとく切り捨て、将来ある若者たちの夢を奪う政治と経済。どこか狂っているように見えるのは私だけだろうか?