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 急増する滞納問題

 税理士仲間の会議で、滞納問題の相談が急増していると話題になった。当事務所も例外ではない。顧問先から、「徴収官から呼び出しがかかった」との連絡が立て続けにあった。

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 <ある事例>
 建築下請業の法人で、前期の法人税は欠損だが、消費税の確定本税が約200万円。一度で納められず、毎月10万円の分納を続けてきたが、夏枯れで7、8月の2回、納付が滞った。とたんに脅しの文面をマーカーで強調し、日時を指定した署への呼出し状が送付されてきた。
 消費税の中間納付も直前に納期限を迎え、滞納額は消費税の本税と延滞税で300万円強となった。源泉所得税は何とか期限内納付しているので、滞納となっているのは消費税である。
 この顧客は、材料は発注先もちで人工だしがメインのため、原価は労務費。原則課税で売上額に消費税がほぼモロにかかる一方、賃金の支払いは待ったなしのため、どうしても回転資金優先で消費税が滞納となってしまう。会社存続のため、やむにやまれぬ滞納といえる。会社の固定資産は車両のみ。賃金を少し上回る売掛金が流動資産にあり、これの回収でなんとかやり繰りしている状態だ。

  滞納問題での立会い

 社長と当事務所の担当者、税理士の3人で、資金繰り表、収支の状況を示す試算表、売上請求書などを用意して出向いたところ、若い徴収官は開口一番、徴収関係では税理士の立会いを認めていないという。現場オンリーの社長では、資金繰りの現状や会社の収支や財務状況について数値から具体的に説明できず、誠意を持って納税していく道筋を理解してもらうことに無理が生じるので、財務を見ている税理士の立会いは必要不可欠であることを説明したところ、徴収官は暗黙のうちに了解した。
 地方税の滞納でも、第3者の立会い拒絶が問題になっているようだが、滞納処分が企業や個人営業者の存続を脅かす現状にある今、滞納問題における立会いを認める取扱いを早急に固定させる必要がある。

  社長を追い込む行政

 徴収官はつづけて、「いまの事態はいつでも差押えができる状況であり、法律上何の問題もない。滞納すれば企業はリスクを負う。」と杓子定規にいう。差押えをちらつかせることで滞納者に圧力をかける常套手段の話ではあるが、差押え対象は売掛金しかなく、それを差押えることを暗に匂わせる。日々資金繰りに追われる社長にとって、売掛金が差押えられたら会社が回らないことは火を見るより明らかで、顔がゆがむ。

  「滞納整理モラトリアム」を

 表現はきついが、会社を殺すのは銀行だといわれる。杓子定規に売掛金を差押えられたら、従業員の賃金を支払うことができず会社は存続できない。銀行に加えて会社を殺すのは税務署だということになる。
 税理士事務所が立ち会って、厳しい収支と資金繰りの状況だが誠意を持って納税していくことを説明し、徴収官に納得してもらった。
 この状況で社長一人が出向き、税務署の強圧に腹を立てたり、尻をまくったとしたらどうなるのかと思うと、背筋が寒くなる。
 滞納整理が徴収行政の根幹であることは理解するし、納税猶予や換価の猶予があることも承知の上で、この経済状況下では借入金の返済猶予と同じように、行政面における滞納整理の猶予が必要なのではないだろうか。
 徴収部門は免脱行為などの悪質に絞って滞納処分を行い、一般滞納者に対して仕事をしなくても誰も非難はしない。むしろ、そうした政策的行政は支持されるだろう。
 日本経済の再生、とりわけ中小零細事業者が元気になるために、政策として行政上の「滞納整理モラトリアム」を緊急に措置し、社長を心配事から解放して営業成績を上げることに力を発揮させる必要があるとおもう。