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   「パナマ文書」とは

 数多く報道されているのでごく簡潔にいうと、パナマにある法律事務所の内部情報のこと。法律事務所の名前は「Mossack Fonseca」。
 取得したのは「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」。以下、連合という。
 連合がハッカーのような犯罪的行為でこの情報を取得した様子はない。
 おそらく内部告発であろう。もちろん秘匿されている。
  ジャーナリスト連合のHPの写真
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 情報の量は38年間にわたって扱った契約などが含まれ、容量にして2.6テラバイトのデータで、総数1,150万件という。
 半角英数文字1文字の容量が1バイトとされており、単位は順次キロバイト、メガバイト、ギガバイト、テラバイトとなる。その倍数は1,024倍だが、単純化すれば、1キロバイトは1,000バイトというわけである。
 そうすると2.6テラバイトというのは2.6兆バイト。
 すべて半角英数文字記述された文書や数字だとすれば、2.6兆文字で作られた文書となる。
 「パナマ文書」の膨大さは半端ではない。

 中身は、何十億ドルもの資金をタックス・ヘイブン(租税回避地)へ移すためにこの法律事務所が取り扱ったペパーカンパニーの設立や資金移動の契約である。
 連合が公開すると、世界の要人、企業、個人の名前が次々と明らかになった。
 日本関係ではタックスヘイブンで設立された不透明な法人は24社であることが判明している。
 
   「パナマ文書」で首相辞任

 この文書をきっかけに、アイスランドの首相が辞任した。また、スペインの閣僚も辞任している。
 日本では名前が出た企業や個人が「合法」を主張して言い訳に走っている。

   合法と租税回避と倫理

 タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立してそこに出資したり、すでにあるペーパーカンパニーに儲けた金を出資することは、なるほど合法かもしれない。
 その金を日本国内で運用すれば、運用益に対して日本の法人税や所得税が課税され、納税しなければならない。
 その金をタックス・ヘイブンに移せばその国は運用益に対する課税をしないので、納税はゼロである。租税を回避できる国に金を移動させて、その後の運用も摑まれないようにしている。
 簡単に言うと、こうして税逃れをして、金が金を生み富を膨らまられているというのがタックス・ヘイブンを舞台に繰り広げられているわけだ。
 合法といっても、租税回避であることは間違いない。ただし、その出資資金が日本国内で課税されていないかもしれない。だから、資金の出所に国税庁が注目するのは当然だ。今後の展開をみたいものだ。
 課税済み資金で節税のためだといっても、日本の財源になるべき税が国外に逃れ、しかも国外では無税で運用され自分の懐だけは膨らむ行為であるから、国の政治をつかさどる要人がそんなことをやっていれば倫理問題として非難されるのは当然で、首相や閣僚を辞めざるを得ないであろう。
 舛添東京都知事の実像報道にも呆れるが、諸外国も似たようなものらしい。

   志賀櫻氏の「タックス・ヘイブン」

 元大蔵官僚で国際課税問題に係ってきた志賀櫻氏が岩波新書で「タックス・ヘイブン」を出版している。
 タックス・ヘイブンを舞台とした税逃れの実態がよくわかる書物で、「パナマ文書」が公になった今、ぜひ一読をお勧めしたい。
 志賀氏は昨年暮れ、66歳で急逝された。
 生きていたら税逃れを許さない施策に向かって動いたのではないかと思う。
 志賀氏の本を読むと、タックス・ヘイブンの闇の深さに世界が立ち向かわなければならないと刺激される。
 彼らの税逃れが世界中の一般国民の税金に跳ね返っているのだから。

   笹本稜平氏の「突破口」

 推理作家の笹本氏は、とある信用金庫の職員が殺された事件から、タックス・ヘイブンのひとつである香港への大量送金とマネーロンダリングを題材にした「突破口」(幻冬舎文庫)を出している。これもなかなか面白い。しかし事実は小説より奇なり。
 公表された訳のわからない氏名や名称を見ると、タックス・ヘイブンがマネーロンダリングに使われているのだろうとの疑念がわく。
 警察が「パナマ文書」に注目しているという報道にお目にかからないが、その辺はどうなっているのだろうか。