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 3月22日、三木義一青山学院大学教授などが主宰する「民間税制調査会」が、「消費税について考える」と題したシンポジュウムを開催した。
 誰でも参加できるということであり、消費税は焦眉の問題なのでぜひ論議に加わりたいと筆者もいってみた。

 民主党政権から自公政権になった途端、政府税調は無きに等しいものとなり、昔のように自民党税制調査会が税制の主導権を握るとともに、公開性が一気になくなった。
 税金は国民に直結する政治課題である。国民の声が反映しないのは本来まともではないから、税金の問題で自民党や政府のやりたい放題を食い止めようという動きは大歓迎である。その点で、「民間税調」や「公正な税制を求める市民連絡会(仮称)準備会」(呼びかけ人・宇都宮健児弁護士)の立ち上げは注目されるし、傍観者ではない立場をとりたいと思う。

 さて、「消費税について考える」と題したシンポジュウムでは冒頭で志賀櫻氏が提起を行った。
 その中で、軽減税率は逆進性緩和にならず、むしろ高所得者に恩恵をもたらすとし、軽減税率導入に否定的な見解を述べた。否定的というより、軽減税率の導入を否定する見解といえる。
 進行役の三木教授は、軽減税率導入は愚民政策だとした。ここも否定である。三木さんはデンマークを理想としているようで、デンマークのVAT(日本の消費税に相当)は25%の単一税率で、税金は高いが社会保障が充実しているので国民は受け入れている。その方式を目指すべきではないかとしている。
 パネラーの青木丈税理士も、軽減税率反対で、日本税理士会が新聞に一面広告を出して軽減税率導入反対表明したことに立場が同じだとした。
 民間税調の主宰側メンバーは軽減税率に反対という立場であることははっきりした。

 志賀氏の提起は、軽減税率による逆進性緩和を実証的に検討している様には見えず、いささか乱暴といわざるを得ない。
 会場から施政者目線ではないかとの意見が出されたが、軽減税率に関しては、財務省の意向や日本税理士連合会そのものという感を参加した筆者も持った。
 税調というからには、もう少し分析した数値などを示す必要があろう。

 消費税は買うものにとっては物価の引上げである。そもそも生活必需品に課税することは、生存権を侵害する国家権力の発動であるから、憲法違反といえるものだ。
 憲法は次のように規定する。
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 第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
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 生活資材を通して国民から税金を巻き上げて生活部面を窮地に追い込み、一方ですべての生活部面について社会保障を増進しようというのは、小学生が考えても「矛盾してるよね」ということ。

 消費税の逆進性についてはほぼ大多数の研究者が肯定している。ごく一部に逆進性はほぼないという研究者がいるものの、ないと言い切っているわけではない。
 消費税の宿命というべき逆進性。これは税金としては致命的欠陥である。しかも、全面的に解消することはできない。
 したがって、逆進性を少しでも緩和するにはどうしたらよいのかという議論になる。
 筆者は、各種の統計からみても、すでに軽減税率を入れている諸外国の数値から見ても、生活必需品(どれを対象にするのかの問題はあるが)に軽減税率を導入することは、確実に逆進性緩和になると評価するものだ。

 軽減税率導入の単一政策だけで、所得再配分を機能させ、国民の生活部面で社会保障が確保されるとは思わない。社会保障給付を組み合わせることは重要であろうが、軽減税率を否定するのは即効性を奪う愚かな選択といわざるを得ない。
 民間税調が庶民の目線で議論し、よい提言を出すように期待したい。