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   4年分の確定申告  27年3月31日が申告期限

 国税庁は確定申告期を迎えて、「福島県下12市町村に係る国税の申告・納付等の期限延長措置の終了について」を改めてホームページにアップした。

 簡潔にいうと、原発事故の災害で福島県下12市町村の納税者については、申告と納付を順次延長してきたが、この延長措置をやめるので、今年の3月31日までに申告しなさいということ。

 延長措置は国税庁長官が決める事項。国税庁はホームページで次のように言っている。

  この店が再開できるのか
  
先はまったく見えない
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 東日本大震災の発生に伴い、国税通則法第11条及び同法施行令第3条第1項の規定に基づき、平成23年3月15日付国税庁告示により、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5県について同月11日以降に到来する国税に関する申告・納付等の期限を延長する措置を講じました。
 その後、各地域の復興等の状況を踏まえ、順次、期限延長措置を終了してきましたが、福島県の田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の12市町村については、国税の申告・納付等の期限が引き続き延長されています。
2 今般、当該12市町村における自主的な申告・納付の状況、期限延長措置の終了に係る地元自治体の意見等を踏まえ、当該12市町村に係る期限延長措置を平成26年3月31日をもって終了することとしました。
 ただし、この期限延長措置の終了により、当該12市町村の納税者の方々が複数年分の申告・納付等をしなければならなくなること等を考慮して、1年間の手続期間を設け、平成27年3月31日までに申告・納付等の手続を行っていただくこととします。
 また、同日までに申告・納付等をすることが困難な方については、個々の事情を踏まえ、更なる期限延長を行うこととしています
 東日本大震災により被災した納税者の中には全国各地に避難されている方もおられることから、税に関する相談等については、全国の最寄りの税務署で対応できる体制を整備しています。納税者の方からの相談等に対しては、引き続き納税者の方の立場に立って親切・丁寧に対応いたします。


   無申告になる可能性大

 いくつかの大変な事態が想定される。
 ひとつは、各地に避難して仮住まいを余儀なくされている納税者、とりわけ個人事業者が無申告になる可能性。
 個別事情でさらなる期限延長を行うと国税庁は言っているが、税理士が関与していてこれらの動きを押さえている場合は対応できるであろうが、商売や事業活動を休止し、税理士も関与していない納税者は、申告するということが頭をよぎらないであろう。国税庁の「お知らせ」が届く保証はまったくない。
 これまでも、災害延長の場合でそれが終了した場合、無申告が多数生じている。

    賠償金でモロに税額発生

 加えて大変になるのが、賠償金である。
 避難生活等による精神的損害や生命・身体的損害に対するものは非課税で申告は不要だが、逸失利益などに対する賠償金は非課税にならない。
 ・営業損害のうち、減収分(逸失利益)に対して支払を受ける賠償金事業所得
 ・出荷制限指示による棚卸資産等の損失などに対して支払を受ける賠償金事業所得
 大概の個人事業者は逸失利益に対する賠償金を東電から受けている。必要経費は殆どないであろうから、ほぼそのままの金額が所得になる。モロに納税額が出る。
 ・就労不能となり、給与等の減収分(逸失利益)に対して支払を受ける賠償金一時所得
 給与所得者で被害を受けた人に支払われる賠償金が一時所得で申告しなければならないなど、サラリーマンは思いもいたらないであろう。
 これらの賠償金は避難地での生活費として費消され、納税資金が確保されているとは思えない。必然的に滞納となろう。
 しかも、賠償金は23から26年分の4年間をまとめて申告することになる。場合によっては、22年分の事業所得を延長している場合もあり、そうすると5年分となる。まとまると滞納額は大きくなる。

   過去、税務署は無申告で調査し課税

 いくつかの災害に対して延長が措置されたが、逸失利益の賠償金が無申告になっていることに対して、資料を得た税務署は納税者を呼び出し、期限後申告を提出させた事績がある。
 逸失利益に対する賠償金は原則課税であるから税法上は違法ではないが、政治として課税は間違っているし、それを税務調査で課税するというのも行政として間違っているといいたい。
 仮に福島の原発災害でも税務署がそうした行政をやるとしたら、それは苛斂誅求であろう。

   原発被害の東電賠償金はすべて非課税に

 過去に生じたことのない大規模な原発事故による災害で、福島の原発周辺地は人が住める場所になるのかというほどの災害である。廃炉まで30年かかるといい、汚染地下水は今現在も止められておらず、確かな見通しも示せない状態だ。
 地元に戻って商売ができる保証がない、ということは、その人の生きる権利を奪ったに等しい。逸失利益の賠償金という性質ではなく、その人の人格権侵害に対する賠償金であり、非課税にしなければならない。
 災害は終わっていない。歩調を合わせるように、復興特別所得税は25年延々と国民に納付を求めている。
 政治が当たり前の機能を果たすとともに、行政を担う国税庁としても逸失利益の賠償金だなどという非合理な解釈をやめ非課税とすべきである。
 国民は拍手を送るだろう。