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 総合窓口は大丈夫か
  納税者の利益に不安

 実に驚くことが実際にありました。
 所得税の21年分確定申告を期限内に済ませたところ、間違いがあり過大納税となっていることが判明したため更正の請求をすることになりました。ところが納税者本人が急逝しました。そこで税理士が相続人を請求人にして更正の請求書を税務署に届けたところ、申告した本人ではないので受け付けられないと突き返してきたのです。法律に書いてないというのです。

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 驚いた税理士が、当事務所に電話で問い合わせ。法的にも根拠があるはずだがと。
 結論を先にいいます。相続人は更正の請求をすることができます。法律は明確に規定しています。
 こんな基本的なことが税の専門機関である税務署で分からず、間違った取り扱いを平気でやっているのです。困ったものではすみません。いまは一職員の問題とはいかないのです。ワンストップサービスの窓口一本化で少数の職員が担当しているので、その職員が誤っていればその税務署の入り口で誤りが継続されるからです。全体の納税者の利益になる諸手続きを正確に処理するよう、組織を挙げて整備してくださいと申し上げたい。署を名指ししてもいいのですが、埼玉県のある署としておきます。
 届出をしたのが税理士で、できるはずだと頭にあったから税務署の間違いを正し、納税者の過大納付を取り戻すことにつながりましたが、税法に精通しない納税者なら入り口で跳ね返され、過大納付のまま終わったのではないでしょうか。
 更正の請求には期限がありますから、期限ぎりぎりならひと悶着おきることにもなります。
 
 国税通則法第19条と第23条

 国税通則法は次のような書きぶりになっています。

(修正申告)
第19条 納税申告書を提出した者(その相続人その他当該提出した者の財産に属する権利義務を包括して承継した者を含む。以下第23条第1項及び第2項(更正の請求)において同じ。)は、……修正する納税申告書を税務署長に提出することができる。
(更正の請求)
第23条 納税申告書を提出した者は、次の各号の一に該当する場合は……税務署長に対し、……更正をすべき旨の請求をすることができる。

 更正の請求を規定する第23条だけ読むと、括弧書きがないため、「納税申告書を提出した者」に限定されていると判断してしまいます。第19条の括弧書きを読みこまないと、相続人も更正の請求をすることができることが抜けてしまいます。

 カスタマーサービスの低下でいいのか

 今年の確定申告でも「自書申告」、ハイカウンターによる立ちっぱなし記載が行われています。職員が丁寧な記載指導をしないため、間違いのまま記載して提出する事例が多いと聞きます。税務署は事後処理で申告書の中身をチェックし、過少なら修正申告書を求めてきます。ところが事後処理で過大納付が判明した場合、納税者に更正の請求手続きを知らせるのか、職権で減額更正するのか、どうもよく見えません。
 ある納税者が収入金額を桁間違いし、前年と比較して360倍もの所得税を申告しました。決算書をチェックすれば桁間違いはすぐわかります。税務署で記載して提出したのですが、記載時も提出時も何らチェックが入らず、受け付けられています。桁間違いをした本人の自己責任だと言えばそれまででしょうが、以前の確定申告の相談体制なら確実に防いでいたであろう申告ミスです。
 カスタマーサービスの向上といっていた国税庁長官がいましたが、昔話の感があります。
 少なくとも法律に精通し、適正処理すら危うくなるようなことはやめ、カスタマーサービスの向上を再度税務署の目標にしてほしいものです。