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  労働組合と税金
  
(税制懇「労働組合と税金」改訂版2013年10月発行より)


* 全国税制懇話会の会員である山口潤一郎税理士が簡易版としてまとめたものです。
 同氏の許可を得て下記に掲載しています。
 労働組合の課税に関するハンディー版・インデックスとして活用していただければ幸いです。

 

 詳しい内容は、右の冊子をお読みください。

  全国税制懇話会が改訂版を25年10月に作成
    課税を巡る、国税庁との歴史的経過を詳述
    不当な課税を受けないために、ぜひ一読を

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 1 労働組合に必要な申告等

 ① 法人税(収益事業に課税、1000人未満の組合には課税しない*1983年国税庁回答、ただしこの回答が現在も適用されているかは未確認)
 ② 事業税(収益事業に課税)
 ③ 都道府県民税(収益事業に課税)
④ 消費税(課税売上高1000万円を超えた翌々年度に納税義務が生じる)
⑤ 源泉所得税(給与、報酬)
 ⑥ 預金利子・配当(法人格組合は金融機関への届出で非課税)
 ⑦ 収支計算書(全収入8千万を超える公益法人に提出義務*罰則規定なし)
 ⑧ 固定資産税(法人格組合所有の事務所倉庫には課税されない)
 
2 法人格を持つ労働組合かどうかで変わる税金
 ① 法人格を持つ労働組合   = 公益法人
 ② 法人格を持たない労働組合 = 人格なき社団
 
3 申告が必要な機関
本部・支部・分会など独自会計を持つ個々の機関が申告主体
 本部(支部)が支部(分会)の決算等をまとめて行っている場合は統合して申告
 
3 収益事業の区分経理
① 労働組合の収入形態 
  収益事業収入  国保事務収入、労働保険報奨金収入、不動産賃貸収入
  非収益事業収入 組合費収入、カンパ収入
  混在事業収入  手数料収入、雑収入
② 必要な区分経理
 一般会計と収益事業会計(特別会計)の区分経理(期末修正可)。
  共用資産の減価償却費(帳簿価額)の按分経理
 ③ 費用の配賦基準
  資産の使用割合 減価償却費、地代家賃、固定資産税
  従業員従事割合 人件費、福利厚生費
  収入金額割合  一般管理費
 
4 会計処理
 発生主義、複式簿記の採用が望ましい。
 
5 税率

 
法人格組合
人格なき社団
法人 課税所得800万以下
税率      800万超
15%
19%
15%
25.5%
復興特別法人税
法人税額×10%
道府県民税
法人税割5%  均等割20.000円
市町村民税
法人税割12.3% 均等割50.000円
法人事業税
地方特別税
年400万円以下2.7%、800万円以下4.0%、800万超5.3%法人事業税の81%

 
6 労働組合の源泉徴収義務(納税地は支給事務所所在地)

 
源泉対象
 
非課税規定(通勤手当、旅費、宿日直料など)
×
適用を受けるために一括支払はしない
短期専従者給与(日当)、賃金カット補填金
×
雑所得(所得20万円以下申告不要)、医療費控除など確定申告すると申告義務発生
役員手当(専従手当)
清算される行動費を除き、給与として源泉徴収対象、非専従の場合は乙欄扱い。
収益事業からの臨時給与や渡切高額行動費が損金にならない。
行動費
 
×
渡切行動費は給与として源泉徴収対象
旅費(運賃、宿泊料、食事その他の雑費)=日当は社会通念上「適正なバランス」を組合規約の規定に設けて運用すれば非課税
動員手当等の日当
×
動員手当、大会日当は課税されない
専従損失補償金
×
一時所得
弾圧犠牲者補償金
×
原則非課税、組合や雇用主からの退職金相当見舞金は一時所得
退職金・退職手当
プロ専=会社及び組合退職時の二回に課税
弁護士等の報酬・料金
弁護士、税理士、芸能人など
復興特別所得税
源泉所得税×2.1%

 
7 法人税の申告
 ① 事業開始届出書提出=収益事業開始2ヵ月以内に所轄税務署
② 確定申告期限、納付期限=事業年度終了後2ヶ月以内
 ③ 確定申告書添付書類=貸借対照表、損益計算書
8 法人税損益計算書の提出(不提出への罰則規定はない)
 ① 対象は法人格組合(法人税確定申告書提出組合は除外)
 ② 提出 事業年度終了後4ヶ月以内
 ③ 年間収入8000万円以下の組合は除外(一般会計と特別会計を合算)
 ④ 除外収入 不動産売却収入、剰余金、各種取崩収入など実収入にならないもの。
 
9 労働組合の収益分配と解散分配金
労働組合構成員に所得税が課税される(収益の分配=雑所得、解散の分配=一時所得)
 
10 労働組合と消費税
 ① 原則
 法人税=収益事業に課税、消費税は「資産の譲渡等の対価」に課税
 ② 消費税の納税義務者
 法人税同様、「経済的に独立」している機関
 ③ 機関紙は不課税
 組合員に対し業務の一環として配布される場合「資産の譲渡等」非該当
④ 会館建設時の建設費用など多額の消費税負担がある場合
  課税事業者を選択すれば還付は可能であるが、二年間は免税事業者に戻れない。
 ⑤ 収入の区分
 資産の譲渡等に該当
   A 課税売上         事務手数料収入など
   Y 免税売上         輸出収入
   B 非課税売上        受取利子、土地貸付・売却収入
 資産の譲渡等に非該当
   C 特定収入         組合費、カンパ、交付金、補助金等
    C1 課税仕入限定      ひも付き交付金など
    C2 課税非課税共通     共通仕入限定収入
    C3  C2 C3以外の収入   組合費収入
   D 特定収入に該当しない収入 借入金、預り金、貸付回収金、前期繰越金
 ⑥ 特定収入割合により仕入控除額から調整額を差し引く計算がある。
  労働組合は特定収入が多く、特定収入割合が5%以上となり、調整が必要。
⑦ 簡易課税について
 前々年課税売上高5000万円以下の場合適用できるが、試算の上で採否を決定する。
 ⑧ 消費税増税
 課税仕入計算 4/105 → 6.3/108 → 7.8/110