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  経団連会長が、「皆目分からない」

 大阪府知事と大阪市長のダブル選挙は、橋下氏の狙いどおり、「大阪維新の会」が両方の首長を押さえた。
 全国が注目し、マスコミ報道も過熱気味だったが、橋下氏が選挙で訴えたことは「現状を破壊する」という言葉。そして、役所と公務員と議会の他政党を抵抗勢力だとする訴えを繰り返した。
 ワンフレーズでこのことだけを訴え続け、具体的中身はさっぱりわからないままであったが、イメージづくりに成功し勝利に結びつけた。
 中身が具体的になっていないことについて、米倉日本経団連会長は、「大阪都構想」について、「無駄を省くというだけで、どうゆうふうに進めていくのか、全然、皆目分からない」と記者団に述べている(11月28日)。
 影響力の大きい人が、実に端的に指摘したものだ。これ以上言うことはない。

  小泉流?

 思い出してきた方もいるだろうが、破壊と抵抗勢力とワンフレーズは、小泉純一郎氏が旋風を巻き起こした手法と笑ってしまうぐらい同じである。小泉氏のイメージ旋風で何かが変わると思った国民は多数の議席を与えた。そこで小泉氏がやったことは、構造改革と称する市場原理主義の国政への導入である。
 おかげで、市場原理を実践できる企業が栄え、市場に羊のごとくほうりこまれる生身の国民は生活破壊に直面した。
 この小泉流破壊に国民は気がつき、その反動が、「生活第一」を掲げた民主党を政権につけた。国民的期待である。
 その民主党も「生活第一」どころが、構造改革路線にすり寄って走り始めているから、国民の期待は裏切られ、不安・不満は底なし沼のように拡大している。経済的停滞が続く大阪はなおさらであろう。この不安・不満に付け込むイメージづくりに、橋下氏は小泉流に学んだであろう。

  ポピュリスト!

 橋下氏をポピュリストと指摘する学者がいる。ポピュリストは市場原理主義の立場をとる。橋下氏と小泉氏の市場原理主義者たる立場は両者共通なので、仮に「大阪都構想」が実現されたとして、大阪都民に生活破壊が襲いかかる恐れが大きい。また、構想が画餅に帰して頓挫すると、「無駄を省く」どころか無駄な停滞を招きかねない。

 大阪人の選択だが、ポピュリズムを定義する言葉として「複雑な政治的争点を単純化して、いたずらに民衆の人気取りに終始し、真の政治的解決を回避するもの」というのがある。どうも日本の傾向になりつつあるようで、将来が心許ない。