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  その人は 

タイム誌にならって、このコーナーもことしの人を選んだ。
 その人は、佐川宣寿国税庁長官だ。
 この人、国税庁長官の前は、財務省理財局長。
 9億円の価値がある国有財産の土地をなんと8億円も値引きして森友学園に譲渡した。普通ではありえないので国会でそのいきさつを解明しようとした。
 そこで頑張ったのが佐川理財局長である。理財局というのは、国有財産を管理する財務省の担当部署で、そこの長として国会答弁にあたった。
 どんなふうに頑張ったのかというと、資料は破棄した、適正だといいはり続けたこと。国会議員も国民も全く納得できないが、この佐川回答のおかげで結局解明に至らず、なんとか国会の追及を乗り切ったところで官庁の人事の季節を迎えた。
 安倍さんの覚えめでたし。一方、仮に佐川氏を冷遇することになれば、反旗をかかげられて窮地に立たされかねないと読んだか、財務省ナンバー2の国税庁長官に就任させた。

  公僕 0R 下僕

 公務員は憲法15条で「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定している。好きな言葉ではないが「公僕」といわれることもある。公共のしもべというわけだ。
 これに対する言葉に「下僕」がある。広辞苑では「男の召使い」「下男」となっている。
 この区分けで佐川氏の国会での立ち居振る舞いをみていると、公僕はどこにも見えず、下僕ぶりが目に付いた。
 しかし、別の角度から見る人に取っては、超優秀な下僕との評価になる。人事権はその人が握っているのだから、国税庁長官に就けることでもうひと踏ん張り下僕としての働きを期待したのだろう。

  検査院ごとき に?

 ところが、間の悪いことに会計検査院が8億円値引きに疑問を呈した。
 実は、財務省は官庁の中の官庁を自認し、「会計検査院ごとき」に指摘されることは屁にも思っていない。ほかの事なら、佐川氏が国会でやったように突っ張り返すだけだろうけれど、さすがにそうもいかない。さて、どうなるのか見ものである。
 もし、それにも拘らず疑問点が解明されないとしたら、佐川氏の功績は更に増加する。そうなれば、事務方官僚のトップである財務省事務次官に就任するのがふさわしい。
 安倍さんはきっとそうすると思うので、この予想は確立が高いはずだ。

  石破氏にもいわれ・・・

 さてさて、検査院の報告を受けて朝日新聞11月25日は、石破氏の発言を次のように報じた。記事を引用する。
 『石破氏は24日、「国会の求めに応じて報告が出た。感情論ではなく、きちんと法律と事実に基づいて、どうしてこんなことが起こったかを解明するのが国会の責任だ」とTBSの番組収録で語った。
 石破氏は、財務省局長として国会答弁で手続きの正当性を訴えてきた佐川宣寿・国税庁長官について「政府として何の瑕疵(かし)もないのであればなおさら記者会見して、納税者に広く、きちんとした説明をするのが国税のトップだ」と指摘。「(税金を)払いたくないと納税者に思われた、いかん」と語った。』

  でも、いい影響なのでは

 国税の職場では仕事に支障が出ているという。
 調査官が税務調査に行くと、「資料は廃棄した」「申告は適正だ」「責任者の私が言っているのだから間違いない」「国税庁長官がそうすれば通ると教えてくれたから、それに従っているだけだ」と、行く先々でいわれ、調査にならないというのだ。

 そうした話を聞くと、佐川国税庁長官は「下僕」ではなく、実に立派な「公僕」と評せねばならない。国民の記帳保存や調査負担を軽くしてくれて、ありがとう!