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   29年分の路線価から

 「目を疑う」ことは滅多にないが、国税庁のホームページを確認して、目を疑うことになった。
 国税庁は毎年7月1日に路線価を発表している。
 当日、事務所の職員が「越生町が消えました。そんなことがあるのですか。国税庁のミスでしょうか」といってきた。
 何の話かと聞くと、29年分に路線価が載っていないというのだ。
 「そんなことはない」と断言して、国税庁のHPを開き、29年の路線価をたどっていくと右図の下の状態になっている。
 市町村を検索する「お」の欄に越生町がない。
 何かの間違いだろうと28年分(上の図)と比べると、小川町も消えている。
 なんと、近隣では小川町と越生町の路線価がなくなり、すべてが倍率になっていた。
  国税庁ホームページ 路線価の画面
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 どうしてこうなったのか税務署に電話して聞いてみた。
 回答しないのかと思ったら、資産税担当者から次のような回答があった。
 「予算を削減する関係で路線価の評価をやめた結果です。」

 国税庁の予算の関係でそんなことができるのか疑問に思ったが、そう断言されたので、妙に納得した。金をかけて評価額の基準を提供するに値しない地域だということかと。
 それでもそんなことがあるのかとモヤモヤが消えないので、元資産税職員に聞いてみると、路線価で5万円未満のところは倍率に切り替えることはあるという。
 たしかに越生事務所を例にすると、次の推移になる。
 27年 相続税路線価 1㎡ 36,000円
 28年 相続税路線価 1㎡ 36,000円
 29年 倍率         ?
 ちなみに、倍率の場合、一般社団法人・資産評価システム研究センターが公開している固定資産税路線価を使うことができるとされている。
 同じ地点のその推移は次のとおり。
 27年 固定資産税路線価 1㎡ 31,300円
 28年 固定資産税路線価 1㎡ 31,000円
 29年 固定資産税路線価 1㎡ 30,600円
 御覧のように評価額は年々下がっている。

   東京は大幅な値上がり

 さて、銀座の鳩居堂前の路線価はどうだろうか。
 27年 1㎡  2,696万円
 28年 1㎡  3,200万円 (前年比118.7%)
 29年 1㎡  4,032万円 (前年比126.0%)
 単位を間違えないようにしていただきたいが、すごい値上がりである。

 朝日新聞の報道によれば、東京では路線価の2.6倍の値段で土地が取引されているという。
 日本銀行がばらまいた金が余り、不動産投資過熱に向かっている。
 鳩居堂前の路線価は、バブル期を超えた。こうした動きは、上場不動産投資信託(J-REIT=リート)による不動産投資によるもので、ホテル稼働率の向上、オフィス賃料の値上がりで高めの土地を購入しても賃料収入で儲けが出るとの動きによる。
 ところが2017年の収益率は4%を切り、収益悪化ラインの3.5%を下回り、バブル崩壊の懸念もあるとしている。

 大都市一極集中、地方の疲弊が路線価を通じて、手に取るようにわかる。越生で路線価が消えたことや、銀座の路線価の値上がりに目を疑うが、これが現実のようだ。
 さて、東京オリンピックが終わってから、東京の路線価はどうなるのであろうか。
 どうも、失われた20年になりかねないのではないだろうか。お金持ちたちの無節操の尻拭いを越生町の住人にさせないでほしいものだ。