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 昨年を振り返ると、公務員の在り方をつくづく考えさせられた。

 税理士という職業柄、昨年も何人もの税務職員と接した。税務調査や納税に関して、接したのは調査官や徴収官が主であるが、総務課長や納税者支援調整官との接触もあった。
 その職員たちのおおよその人は妥当な応対ぶりで、人品を問う場面もなかった。
 しかし、数人はあきれるような対応であった。
 法律無視、手続無視、納税者の不知に付け込んで根拠のない不当課税を平気で行い、違法を指摘すると開き直る。
 その上司も部下を庇うだけで納税者を見下す対応しかしない。接触割合でいえば3割に人品を問うような税務職員がいた。
 税務職員は国家公務員で一般職の非現業職員に分類される。その定数は5万6千人。
 統計学の定説に従えば、一定の部分計測値や統計値は全体に当てはまるという。とすれば、経験側から推認して、税務職員には1万7千人ほどが公務員として妥当性を欠く職員郡が存在することになる。
 実はこの推認方法は、税務調査で所得を認定するときに税務職員が使う方法でもある。
 全てを調査することはできないので、経験則から三段論法で推認するというものである。
 
 では、公務員全体ではどうなるのか。
 公務員の数は下表のとおり。
 
 公務員の数 (平成25年度=単位:人)
 
公務員
総計
3,408,000
国家公務員
639,000
一般職
341,000

非現業職員(税務職員等)
275,000
 

検察官
3,000
 

特定独立行政法人職員
63,000
 
特別職
299,000

大臣、政務官、大使等
400
 

裁判官と裁判所職員
26,000
 

国会職員
4,000
 

防衛庁職員(自衛官等)
269,000
 

特定独立行政法人役員
40
 
地方公務員
2,769,000
 
 
 
 
 経験則からいえば、公務員として妥当性を欠く公務員郡が100万人存在する可能性があると推認される。安倍首相もその中の一人。
 
   「死ねばいいのに」
 
 昨年、いわゆるキャリア官僚のあきれる振る舞いが摘発された。
 経産省キャリア官僚がブログに書き込んだ言葉。「(被災地は)もともと、ほぼ滅んでいた」「復興は不要だ」「じじぃばばぁ」「死ねばいいのに」……
 復興庁の幹部職員は、市民団体のことを「左翼のクソども」とツイッターに書き込んだ。
 この振る舞いに関して、2013年9月27日の朝日新聞天声人語で故後藤田正晴氏のことを紹介している。
 
 公務員のことを官吏といった。そのあるべき姿を「吏道」という。
 後藤田氏が官僚になった時、中国の古典からその「吏道」の心構えを教わったという。
 
 「爾の俸 爾の禄は 民の膏 民の脂なり 下民は虐げ易きも 上天は欺き難し」
(なんじのほう なんじのろくは たみのこう たみのしなり かみんはしいたげやすきも じょうてんはあざむきがたし)
 
 天声人語子は、「お前らがもらう給料は人々の払う税金、つまりは汗と脂の結晶である。それを忘れて人々を虐げるなら天罰が下るぞ」と解説するとともに、キャリア官僚や権力を持つ公務員は、「ともすれば過信や思い上がり、国民を見下す高慢に転じる」と指摘し、「吏道」の崩壊を嘆き、立て直しを説いた。
 とんでもない税務職員と対応した昨年の実感から、天声人語子に全面的に共感する。
 ちなみに、悪質な脱税については国税犯則取締法を適用して、いわゆる査察が調査するが、この法律では査察官のことを「収税官吏」としており、官吏という言葉は税務においては現在も健在だ。
 
 政府や一部の政党が公務員攻撃を行い、公務員の生活と権利を奪う攻撃が繰り返されていることは不当であり、あってはならないことと思う。
 最近は、がんじがらめの管理体制が敷かれ、委縮せざるを得ない労務管理下にあると聞く。公務員が全体の奉仕者として、「吏道」を踏まえ、その職責を正当に果たせないような国に未来はない。
 その点では、現場で汗を流す公務員を応援したいと思うが、「下民を虐げ」て恥じないとんでもない公務員がいるのも現実だ。

 税務関係の公務員との接触を常とする職業人として、「吏道」を踏みにじる事態があれば、国の未来のために屈することなく対峙していくことを宣言し、2014年の新年の抱負としたい。