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    ロシアの事情

 2月15日、ロシアのチェリャビンスク付近に巨大な隕石が落下し多くの被害をもたらした。死者が出なかったのは不幸中の幸いだが、すさまじい破壊力に自然の脅威を感じる。
 この災害が強い印象を与えたのは、テレビニュースで繰り返し流れた映像が鮮烈だったせいだと思う。
 空を横切り爆発する巨大な隕石の姿が、映像としてネットの動画サイトにすぐ流れたそうだ。
 テレビニュースでも、まるでSF映画を見ているような映像が、しかも様々な場所で捉えた映像を何度も放映した。
 隕石の落下は一瞬のことだ。それなのになぜ、このような映像が数多く撮影できたのか疑問に思っていたら、それは、ロシアではほとんどすべての車のダッシュボードにカメラが搭載されており、ドライブ中は必ずカメラで前方を撮影しているからだという。
 ドライブレコーダーというもので、日本でも車への搭載が増えているようだが、すべての車というわけではない。そこにはロシアの特殊性があった。
 広大な国土のうえ、警察は職務怠慢に加え腐敗も横行し、衝突事故では目撃証言が有利に働くことがほとんどない法制度のために、ロシアのドライバーにとって車載カメラは必要不可欠となっている。運転中はすべて映像に収め、仮に衝突事故を起こしたりもらったりしたときは、自分の潔白や身を守る唯一の手段となるためだ。

  日本では防犯カメラ

 隕石落下でロシアの事情の一端が図らずも分かったのだが、それをバカにしたり笑って済ますわけにいかないのが日本の現状である。
 あらゆるところに設置されている防犯カメラ。隕石が人に置き換わり、一般の市民が24時間カメラで撮られまくっているということになる。これで多くの犯人を捕まえているので何となく受け入れているが、怖いといえば怖い話だ。

  権力の横暴を規制するために

 一方で権力側の不正や違法も後を絶たず、刑事や検事の取り調べを撮影して可視化し、権力の横暴を規制しようということになっている。
 これは刑事事件だけにとどまらない。税務調査でも権力をカサにきた調査が横行し、不服申し立てや裁判でその事実が認定され、調査の取り消しという納税者の全面勝利が続いている。
 つまり、権力を持ちそれを行使する人間は、往々にして横暴にふるまい、市民や納税者の権利を侵害する場合が生じるということである。たまたま事実が認定され逆転勝利となったが、権力側の違法を証明することはロシアに限らず日本でも大変な困難を伴う。とすれば、権力を行使される側は事前の防御策を立てなければならないということになる。
 税務調査に関して国税通則法が改正され手続きが明確になった部分があるものの、権力側を真に規制する措置は希薄である。税務調査は「質問検査権」と言われるように、質問が重要な要素になっているのだから、このやりとりを録音することが刑事取調べの可視化と同じ水準の可視化になると思う。
 通則法には録音に関する規定は一切ないので、それがダメもヨイもない。
 隕石は、ロシアの事情を教え、かつ、日本でも教訓になることを教えてくれたわけだ。