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    アベノミクスの破綻

 日本銀行(黒田東彦総裁)が、消費者物価の上昇率を「2%」に引き上げるとした目標時期をまたも1年先送りし「2019年ごろ」にすると決めた。
 最初は・・・「2015年度にかけて」であったが、2015年4月・・・「2016年度前半ごろ」、 2度目は2015年10月・・・「2016年度後半ごろ」、 3度目は2016年1月・・・「2017年度前半ごろ」、 4度目は2016年4月・・・「2017年度中」、 5度目は2016年10月・・・「2018年度ごろ」、 6度目は2017年6月・・・「2019年度ごろ」(黒田総裁任期切れ)である。

 安倍総理は首相に就任する以前から「日本経済の「再生」のためには「デフレ」からの脱却が必要だ。」と消費者物価の上昇を目標に、当時の白川芳明日銀総裁に異常な金融緩和の実行を迫り続けてきた。 安倍首相の誕生に合わせその任期の残っていた白川日銀総裁を更迭し、自らの主張に近い黒田氏を新総裁に据えて2013年4月金利の引き下げや国債の買い上げなど「異次元の金融緩和」で物価上昇率2%を打ち出した。
 以来、今回6回目の先送りである。 政策に対する信頼は完全に失われた。 このツケを誰が負うのか? 何れ国民にツケが回ってくる。

 国民生活に重大な影響を与える経済目標を6度も先送りし、2018年4月まで日銀総裁の任期を続けさせる? お友達総裁でよいのか?
 誤った政策をいくら拡大し続けてもその効果は国民生活を不幸にするだけだ。
 「アベノミクス」(金融緩和や大企業減税)になって増えたのは大企業の儲けや溜め込みばかりで、国民の消費も賃金もマイナスの連続である。

 消費者物価の上昇は、経済活動が活発になり、消費や賃金が上昇する結果で、それを金融の緩和で人為的に物価を上昇させようとするのは“邪道”とされている。
 金融緩和を柱のひとつとする「アベノミクス」(安倍政権の経済政策)の完全な破綻である。

    お友達関係 従属関係を断ち切れ

 お友達内閣(稲田防衛・松野文科・山本地方創生大臣・・・菅官房長官・萩生田副長官・・・和泉内閣総理大臣補佐官・・・)、 お友達優遇(森友学園・加計学園・・・)、 従属総裁(黒田日銀総裁・・・)、 いま、官邸主導のゆがみ(安倍内閣の膿)が出始めている。

 ときの政権は、手っ取り早い景気対策として日銀を利用し、金融緩和に頼るのは過去にもあった。また、1980年代、加熱する景気を利上げで抑え込むのを、政治からの圧力で遅れ、バブル崩壊の傷を深くした逆の例もある。
 その反省から1997年日銀法が改正された。 政府からの独立性を高め、金融政策の「独立性」をうたった。
 そんな日銀との関係を従属関係に変えたのが安倍政権だ。 黒田総裁との二人三脚で「アベノミクス」を掲げ、共同で政策のかじ取りを取ってきた。
 政策委員の人事にも官邸の意向が色濃くにじんだ。 金融緩和に慎重な委員を排除し、積極的な委員を登用。 大規模緩和の副作用に警鐘を鳴らすのは、民主党政権下で選ばれた2人だけだ。その2人も先月任期満了で交代し、全員が安倍政権による選任だ。
 いまの日銀は、官邸の了解なしに財政政策(国民目線の)を語ることはできなくなっている。

    欧米は、緩和「出口」へ

 日銀とは対照的に欧米の中央銀行は金融緩和を縮小する「出口」を視野に入れ始めた。
FRB(米連連邦準備制度理事会)は2015年12月に約9年ぶりの利上げに踏み切った。政策金利は1%超に達している。
 量的緩和政策で膨らんだ資産の縮小も始める見通しだ。
 ECB(欧州中央銀行)も6月の理事会で政策金利の追加利下げをしない方針を決めた。

 日銀も財政再建に向けて、大規模金融緩和をいつ、どこで終わらせ、 政府の借金まみれ政策、すでに危機的財政破綻の現状から、「正常化に向けた出口」を議論すべきだ。
 国民にツケが回らないうちに・・・

    実質賃金、5ヶ月増えず! 賃上げ抑制が影響

 厚生労働者が発表して5月の毎月勤労統計調査(確報)によると、賃金の伸びから物価変動の影響を差し引いた実質賃金は、前年同月と同水準で、1月以来、マイナスか横ばいが続き、5ヶ月連続で増えていない。
 アベノミクスのもとで、大企業が利益を上げる一方、賃上げが抑制されていることが改めて明らかにされた。

    個人消費 「力強さない」

 石原経済財政担当大臣は閣議に、2017年度の年次経済報告(経済財政白書)を提出した。
 白書は日本経済の現状について、「企業部門を起点にした好循環が進展」「雇用情勢が一段と改善する中で人手不足感はバブル期並みに高まっている」と分析。
 一方で賃金は「緩やかなもの」にとどまっており、個人消費も「力強さに欠けている」とした。

    「人手不足倒産」 過去10年で最悪

 民間信用調査会社の帝国データバンクは先月、「人手不足倒産」が2017年上半期、2年連続で前年同期を上回り、この10年で最多となったと発表した。
 帝国データバンクは、法的整理のみを倒産集計の対象としており、法的整理をとならない中小企業の人手不足倒産は相当の件数に上るとみられる。