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  目立つ 節税目的   バブル懸念

 銀行が賃貸住宅の建設資金を個人に貸し出す「アパートローン」が膨張し続けている。 日銀によると、2016年の融資額は前年比21.1%増の3兆7860億円に達し、比較可能な2010年以降で最大となった。
 一方大家側は、過剰な貸家建設で空室が増え、ローンを返済できなくなる恐れが続出しることも懸念されており、日銀は警戒を強めている。
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  増税された相続税の対策と銘打ったセミナーが広がっており、主なものは不動産への投資だ。アベノミクスによる景気対策は、中小企業の経営環境は一向に良くならず、銀行は良好な貸付先を見つけられずにいる。 そこでターゲットに見出したのが地主(土地持=担保提供)への“相続税ビジネス”である。
 2016年の貸家着工は40万戸を超え、8年ぶりの高水準である。

 そこには、需要と供給の経済バランスはなく、商機と捉えた銀行のご都合主義の戦略しかない。
 空室増と不動産バブル ・・・ 騙した者と騙された者 ・・・ 踊った者と踊らされた者 ・・・ 注意が必要である。

   不動産バブル崩壊 不動産下落 地銀・信金の4割が赤字

 日銀が公表した金融システムリポートは、不動産価格が急激に下落した場合に、金融機関が受ける収益面の影響の試算を明らかにした。 それによると、国際的な金融規制を受けない地方銀行や信用金庫のうち約4割は、損失を本業の利益で埋められず、純損失になる懸念があるという。
 日銀がこうした資産を示すのは、不動産向け融資のリスク管理を徹底するよう金融機関に促すのが狙いだ。

 事務所のクライアントへの金融機関の勧誘 ・・・ 空室が目立ち、修繕することもままならず、ローンの返済に窮している大家へ、 ・・・ 「いまは、超低金利、借り得なので、新たに空地にマンションを建築しましょう。 新しいマンションの賃貸料で、空室の多いマンションの穴埋めができますよ。有利な条件で融資します。」 等々 ・・・ は度を越えてきている。

 私たち税理士は、バブル経済崩壊で手痛い経験をした中小企業・国民の立場から、二度と繰り返してはならないバブル経済へ警笛を鳴らしていく必要がある。

    個人資産を担保に要求

 小規模企業の経営者や個人事業主が銀行から融資を受ける際、個人資産を担保に取られることが大きな問題となっている。 挙句に、親族や知人の個人資産まで担保に取られている例もある。 融資の引き揚げや経営破綻の際、経営者や親族、知人は住宅など生活を根こそぎ奪われる。 自殺者を生むなど深刻な被害をもたらしている。 テレビドラマでも見かけるシーンだ。

 金融機関自身が個人資産を担保にするよう強引に求めている。 経営者は親族や知人の個人資産を担保提供しなければ金融機関からの借入が不可能な状況だ。 
 個人資産を担保提供した理由(複数回答)は「金融機関に求められたから」(79.1%)が第1位だ。

 中小企業庁「小規模企業白書」も、「会社や事業の存立基盤にかかわる資金調達において、経営者や親族の個人資産に依存することは好ましくない」と改善を呼びかけている。

   相続税対策になるのか

 2015年の税制改正で相続税の課税対象が大きく拡大された(基礎控除5,000万円から3,000万円、相続人1人当たり控除額1,000万円~600万円に40%引き下げ)。
 相続税対策セミナーに多くの人が参加するのも関心の高さがうかがえる。
 こうしたセミナーでは相続税対策として不動産投資を進めている。 セミナーの主な主催者は金融機関や建設会社で、相続税増税を商機と捉え、融資や売上につなげようとする思惑が見える。

 不動産投資がなぜ相続税の節税になるのか ?
 現金はその同額が相続財産と評価される。 
 それを賃貸物件に投資すると、土地や建物の評価額は支払った現金(購入価額)より低く評価(土地は7~8割程度、建物は7割程度)される。 この差額が節税につながるというわけだ。
 この効果は、購入時には最大に現れるが、時がたつにつて減少、なくなってくる。
 また、自らの現金で購入する場合は、負の財産はないが、金融機関からの借入で賃貸物件を購入する場合は、負の財産は完済するまでつづく。 ・・・ 数年後、賃貸物件の老朽化と空室で賃貸料収入の全てを支払に回しても借入金の返済に充当できないという事態になれば、相続税対策・節税どころではない。

 ブームはすでに破たんが見えている。今年に入って首都圏では、新築2年目以降のアパート空室率が3割を超えている。 この供給過剰は日本が人口増に転じない限る解消できない。

 先見性を持たないと、節税どころか大切な財産そのものを失うことになる。

 甘い話には、落とし穴がある。

   日銀 ・・・ 出口で 赤字転落も

 日銀の黒田総裁は、衆議院財務金融委員会で、日銀による大規模な金融緩和を終了させる「出口」論で、「その時点の経済情勢などによるもので、現時点で具体的に説明するのは難しい」と述べつつも、日銀が赤字に転落する可能性を否定しなかった。