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  中小企業・2017年問題

 いま、黒字にもかかわらず、事業を廃業する中小企業が相次いでいる。
 その数は全国で年間27,000件にも及ぶと言われる。
 中小企業の経営者年齢で最も多いのは昨年時点で67歳、20年前は47歳の働き盛りの世代であった。 2017年、団塊世代(1947~1950年生まれ)の経営者が70歳を迎えはじめ廃業が急増するとみられているからだ。
   シャッター商店街に?
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  背景にあるのは後継者の問題だ。 事業経営の将来に希望が見出せず、子どもがいても会社を継がせる展望を持てない経営者が少なくない。
 日本の企業数は約382万社(2014年.中小企業庁発表)、うち99.7%が中小・零細企業である。 日本の雇用の7割を支えている。 廃業が増えると中小企業が長年築き上げてきた雇用や技術が失われる。 中小・零細企業が支えている日本経済の底力が崩壊する。 ・・・ これが中小企業・2017年問題と言われる。

 現場からは、「これから先、どうなるか見当がつかない」 「子どもにすべての責任を負わせたくない」 ・・・ 経営者たちの疲弊や絶望感が数多く聞こえてくる。

   墨田区ではじまった「企業健康診断」 ・ 全国初

 墨田区では「後継ぎがいない」などの理由で休業したり廃業したりした企業は5年間で357社にのぼっている。
 昨年10月、廃業をなくすための取組がはじまった。60歳以上の社長を対象にした『企業経営診断』だ。
 地元の信用金庫などの金融機関の担当者が“経営のバトンタッチの準備がどれくらい進んでいるか?」と社長を訪ね案件を掘り起こす。
 税理士や中小企業診断士などの専門家が事業内容や財務状況を視、会社の強みを分析し、事業の引継を無料でサポートする制度だ。
 『企業経営診断』には、地元の商工会や自治体、普段はライバル関係にある複数の信用金庫なども参加する全国初の試みだ。

 東京商工会議所墨田支部の阿部貴明会長は、「その事業を引継ぐ人がいないという承継の問題だけで確実に必要な企業がなくなっている。そのことに早く気が付いてもらいたい」と危機感を募らせている。

 国も墨田区のような診断システムを始めるとしている。

 もはや「中小企業・2017年問題」は国・自治体、地域、金融、専門家などすべてが共同して取り組まなければならない問題となっている。

   受け継ぐ側にも働きかけ ・ 中小企業の魅力を発信

 受け継ぐ側への働き掛けも動き始めている。 若者たちが憧れるような後継者に注目し、発信するプロジェクトだ。
 プロジェクトを仕掛けたのは近畿経済産業局。 目指しているのはベンチャー型事業継承という新たなビジネスモデルの提案だ。
 家業の設備や資金などを活用し、若い発想と組み合わせることで、これまでにない価値を生み出す「後継ぎの新たな考え方」を意味している。

 経済産業省では、2016年5月「はばたく中小企業・小規模事業者300社」 と 「はばたく商店街30選」を選定し、はばたく中小・零細企業の名前や実例を特集している。 参考になる。