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  景況感 依然厳しい  中小企業

   全国中小企業中央会が発表した中小企業月次景況調査は、「景気回復のムードはあるが実体経済への反映がされていない」と指摘、足元の景気判断指数(DI)は前月をさらに3.0ポイント上回るマイナス35.3であった。
 販売価格や取引条件など8指標中5指標で前月対比マイナス。売上高は2.1ポイント低下。非製造業では4.7ポイント低下した。
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 調査では、「円安の影響で油代や仕入価格が値上がりした」「機械が老朽化したが設備投資する資金がない」「出荷は昨年と同等だが、原材料費があがっており価格転嫁が大変」など経営はますます悪化している状況だ。
 金融緩和、円安、インフレ基調・・・等アベニミクスは、経団連をはじめ大企業には歓迎されているが、中小企業には先行き不透明な状況が続いている。

   一方 円安効果で経常益16%増  大企業

 2013年12月期決算の大企業連結経常利益は、前期に比べ16%増の見通しだ。グローバル展開する企業を中心に、円安の効果、ヨーロッパの経済回復などだ。3月期決算企業の来期予想の先行指標として注目される。
 12月期決算企業は、キャノンやブリジストンなどグローバル展開する大企業が多い。キャノンの今期増益の主因は円安である。円安効果だけで営業利益を1092億円押し上げている。ブルジストンも同様に為替要因での営業利益が750億円を占める。
 グローバル展開する大企業はこぞって「海外の景気回復・円安に伴って販売増も収益も追い風となる」「アメリカは個人消費が強く、企業需要も回復している。ヨーロッパは不透明な部分もあるが、足元の需要は予想外に強い」と判断している。
 正規社員のリストラ・下請単価の切り下げ効果、生産調整による需給の改善も企業収益を好転させている。

   アベノミクスで進む  格差拡大・生活苦

 「企業などの日本経済の将来期待の低下、デフレ予想の固定化」によってデフレ経済が続いてきた」アベノミクスの経済学である。日本のデフレ経済は「期待」の無さや「予想」で起きたのか?
 「大胆な金融緩和を行い、インフレ基調を創り出す」「物価上昇目標を掲げ、大量の資金を市場に供給する」そうすれば「インフレ期待が高まる」。
 人々が「インフレになると思えば、物価が上がる前に物を買う」「物が売れるようになれば物価が上がる」 そこで「デフレ」が克服され、景気も良くなるという。 ・・・ 「風が吹けば、桶屋が儲かる」程度の理論である。
 総務省の「家計調査」によれば、低所得者層は、実収入の減少で、生活費さえ賄えない実態が広がっている。「家計調査」によると、最も低い分位では月収が22万4977円と(2000年対比2011年)4万3155円(16%)減少し、ギリギリの生活をしている。
 最も高い分位では月収84万5604円と(同)6万4542円減少したが、減少幅は7.0%である。
 収入に対する減少比率は低所得者19.18%、高額所得者は7.63%と生活に与える影響は格段に大きい。
 低賃金で雇用されている非正規労働者の割合は過去最高の35.2%(女性は54.5%)に達している。
 日々の生活に苦しみ、将来に不安を抱いている圧倒的消費者にとって、「物価が上がるから早めに物を買うことができるか」(駆け込み需要は一時的)。所得が増えないのに「インフレだ! さあ買わないと」となるわけない。
 賃金が下がり、雇用も不安。将来の年金は切り下げられ、医療も不安。消費を控え貯蓄を増やすのは当然な防衛策。この循環が分からないから「デフレ」の原因は気持ちの問題となるのだろう。

 今は、「空気」と「期待」でアベノミクスが評価されているだけだ。

 「デフレ」克服の道は、賃金を増やし、雇用を安定させ、社会保障を充実して、将来への不安をなくしてこそ訪れる。