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   雇用重視・富裕層への課税を強化

 フランス政府は7月4日、財政赤字削減目標達成に向け、付加価値税(日本の消費税に相当)の引き上げを撤回することを今年度補正予算案の閣議で決定した。
 また、富裕層や大企業への課税強化を中心に税収増を盛込み、15万人の雇用創出を確認した。
 付加価値税(消費税)増税は、サルコジ前政権が今年10月から実施を決めていた。(現行の19.6%を21.2%に引き上げ予定)
 今年5月のフランス大統領選挙では、国民負担を強いるサルコジ前大統領が敗北、反緊縮策と成長戦略を掲げるオランド氏が勝利、付加価値税(消費税)増税撤回は選挙公約の具体化である。

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      < フランスの付加価値税(消費税)率 >
 フランスの付加価値税(日本の消費税)率は、19.6%、7.0%、5.5%、2.1%の4段階に分かれている。
 ・ 保険薬、新聞、テレビ受信料などの税率は           2.1%
 ・ 水、食料品、ガスなどの生活必需品の税率は          5.5%
 ・ 映画、演劇、書籍などの文化や観光関係の税率は       7.0%
 ・ 上記の品目を除くすべての財とサービスの販売の税率は  19.6%

     < 日本の消費税率 >
 日本の消費税率はすべてに5.0%。ただし、輸出は0.0%(このため輸出大企業は輸出戻し税(還付消費税)が百億円単位で発生する)
 ・ すべての財とサービスの販売の税率に          5.0%
 ・ ただし、輸出物品の税率は                   0.0%

 フランスの財政支出は世界でも最も大きい国の一つで、その負債は総額1兆8000億ユーロとなり、GDPの9割に達している。
 オランド政権は歳出削減よりも景気刺激を重視し、国家が支援する形での15万人雇用創出や競争力ある産業振興を打ち出した。
 大企業や富裕層への課税強化(100万ユーロを超える年収に75%の税率を新たに導入、累進課税を強化)とともに、中低所得者への増税はしない方針を示した。
 金融取引税も0.1%から0.2%に倍増し、富裕層の資産を対象に「富裕連帯税」を前倒し、相続税や贈与、株主配当金への課税も強化する方針を示した。

   大富豪課税を検討 ― 国連報告書

 国連は、開発と気候変動などの地球的課題の財源として、大富豪への課税検討を報告書に盛込んだ。
 報告書では、世界に10億ドル以上の資産を持つ大富豪が2012年初で1226人、その平均所有資産は37.5億ドル。その1%に課税しても460億ドルの財源となる。
 大富豪は、税金支払後も37億ドル以上保有し、年平均4%の割合で資産を増やしている。差引いても年平均3%(1.1億ドル、約87億円)資産は膨張する。

   社会保障のため?―「残ったのは増税だけ」・・・日本

 野田政権は自民・公明と密室協議を重ね、税と社会保障の一体改革と称し、消費税増税を衆議院で可決した。
 社会保障の財源確保と詭弁を弄し、結果は、社会保障のため? ・・・ が、消費税増税のみが残った。
 社会保障の財源を消費税にシフトし、今後、社会保障の財源に不足が生じたときは、際限もなく消費税増税で賄う ・・・ 。
 社会保障の財源との名目さえつけば、国民を騙せるといった発想だ。

  余った財源は「日本強靭化計画」」に200兆円-自民・公明

 社会保障の財源は消費税と国民負担である。
 社会保障の一体改革では、 ・ 自立した生活=自助。 と ・ 国民相互の助け合い=共助。 が基本とされ、社会保障の給付は権利ではなく、「受益」とされた。
 「受益」には、「受ける利益」と「応分の負担」を求めている。すなわち、「社会保障給付」という憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の精神は放棄された。
 「国に税金は負担しろ」・「国に助けを求めるな」 ・・・ 「助けを求めるなら金(負担)を出せ」、水戸黄門に出てくる悪代官のような政策である。
 早速表れたのが自民・公明の「日本強靭化計画」だ。
 社会保障費の財源を消費税増税と国民負担にまわし、余った財源を大型公共事業「日本強靭化計画」に使おうというものである、自民党の私案で200兆円、公明党の私案で100兆円にものぼる。
 何と言うことはない、大型公共事業(整備新幹線、高速道路、ダム建設の復活など)の財源を捻出するため「税と社会保障の一体改革」と称し、消費増税と社会保障負担増のツケを国民に回しただけのものである。