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  国民には何の益もない不要な制度―個人情報流出の懸念

 住民登録している全員に12桁の番号をつけ、税や社会保障の情報を国家が管理する個人番号(マイナンバー)制度が施行されて10月で1年が経過した。
 誕生したばかりの乳児からお年寄り、在日外国人も含め、国内に住民登録する全ての人が対象となる。  未だに170万世帯の人に通知が届けられていない。通知が届けられていない人はこのまま置き去りにされる。  国民としての認知がされないまま・・・。

 今年1月からは個人番号(マイナンバー)カード交付も行なわれている。  これもトラブルの連続だ。  多額の税金を投じたシステムが停止し、自治体窓口に混乱を引き起こしている。  個人情報を扱う制度の安全性と信頼性が根本から揺らいでいる。

 多くの国民はマイナンバーを日常的に使用する機会はほとんどなく、逆に、個人情報の漏洩への懸念が強く、「マイナンバーカード」の普及も広がっていない。
 マイナンバーカードの申請は国民の任意である。  10月現在、申請は1156万件余、交付は870万枚余であり、国民の不安が表れている。

 政府は、国民がマイナンバーを使わざるをえない仕組みを広げるのに躍起となっている。  買い物のポイントや図書館の貸し出し、健康保険証との連携や銀行預金との連動など、利用対象を広げれば広げるほど個人情報は危険にさらされる。

 何故、マイナンバーが必要なのか? 国民的議論は全くない。

   制度の危険性 ― なりすましの恐れ

 政府は、マイナンバー制度について国が一元的に管理する範囲を「税」・「社会保障」・「災害」に限定すると明言しているが、高市総務大臣をはじめ多くの政府関係者は、範囲を広げ、買い物時のポイントカードまで ・・・ と将来的には「ワンカード」でクレジットカードまで組み込む計画だ。
 全ての情報が連携され、個人の情報が国家・民間で統合される。  行き着く先は、絶対に逃れることのできない“徴兵制”情報となる。

 「なりすまし」や個人情報流出の危険はより現実的だ。  日本年金機構がサイバー攻撃を受け、125万件の個人情報が流出したのは昨年のことだ。  韓国では、なりすましの個人所得税確定申告により、身に覚えのない税金が課税され、なりすましを立証できず、多額の税金を徴収されたという事例も頻発している。

 来年7月からは「マイナポータル」をスタートさせようとしている。インターネットの個人サイトだ。  「情報の連携」の名で各省庁、自治体に集積された膨大な個人情報を統合する。  まさに個人が国家にまるごと管理される。 ・・・ 個人が個人ではなくなる。

 マイナンバー制度は、国家が国民を監視する制度、国民総背番号制度であり、基本的人権、生存権を侵害する制度である。  国民のメリットは皆無に等しいマイナンバー制度、速やかな廃止・中止を求める。

    マイナンバー制度と今後 

 ・ マイナンバーカード交付時の顔認証
 ・ マイナンバーカードを公務員の身分証、民間企業の社員証として利用
 ・ あらゆる場面での本人確認 → 住所・氏名変更、死亡時に事業者からプッシュ通知
 ・ キャッシュカード、クレジットカード、ポイントカード、診察券等のワンカード化
  → スマート(デバイス)フォン等にダウンロードして利用 → 生体情報認証
 ・ 税・社会保障以外の公的料金の徴収に利用
 ・ 医療・介護・健康情報の管理 → 医学分野でのビックデータとして利用
 ・ 国民の購買動向などビックデータ・パーソナルデータを利用・活用 → 大企業の利益に奉仕
  する社会システム

    マイナンバーと税務行政 

①  「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律」(2013年5月31日公布)<番号法>
②  「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律案の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(2013年5月31日公布)<番号整備法>
・ 国税通則法、所得税法等の改正
・ 住民基本台帳法の改正
・ 申告書への記載時期
     所得税・贈与税   ・・・ 2016年分以降
     法人税        ・・・ 2016年1月以降開始事業年度
     消費税・間接諸税 ・・・ 2016年1月以降開始課税期間
     相続税        ・・・ 2016年1月以降相続開始
     法定調書       ・・・ 2016年1月以降の支払(みなし告知取引は3年間の猶予あり)
     申請・届出      ・・・ 2016年1月以降提出
③  「所得税法の一部を改正する法律」(平成28年法律第15号、2016年3月31日公布)
   ・ マイナンバーの記載対象書類の見直し
   ・ マイナンバーの告知省略(告知等する方のマイナンバーその他の事項を記載した帳簿を備
    えているとき
   ・ 扶養控除等申告書へのマイナンバー記載の特例(本人、控除対象配偶者又は扶養親族等の
    マイナンバーなどの事項を記載した帳簿を備えているとき)

* 実務上の番号の取扱い
 ① 申告書・法定調書等には番号の記載が必要
 ② 番号の記載がなくても受理する  ・・・ 番号制度導入(直後)の混乱を回避するため
 ③ 番号の記載なし、番号の記載誤り ・・・ 罰則なし